レクチャー≫ <順次追加していきます> 2014/12/13更新

 

◆「高信頼性接着」とは

 接着強度が高く、接着強度のばらつきが少なく、耐久性に優れ、しかも、生産性に優れた接着を、「高信頼性接着」と呼んでいます。

◆「高信頼性接着」を達成するための基本条件

 1.不良率を低減するためには、平均値を高くするのではなく、「ばらつき」を小さくすることが基本です。

 2.凝集破壊率(接着剤の内部で壊れる破壊)を高くすること

  ・理想的には「接着面積の100%(全面)」が凝集破壊であること

  ・再現性を持って40%以上の凝集破壊率であれば問題ない

   注)凝集破壊率の見方

    ・観察は、肉眼による目視、または、実体顕微鏡やルーペなどの低倍率拡大による観察です。

    高倍率の顕微鏡を使うと、凝集破壊率は高くなり、実際のばらつきとの相関は取れなくなります

   ・凝集破壊の面積率も、画像処理などの高度な手法を用いる必要はありません。

    次のように5段階に区分して、3以上であればOKなどとざっくり判断します。

      1:凝集破壊率0%(完全な界面破壊)

      2:凝集破壊率40%以下

      3:凝集破壊率40~80%

      4:凝集破壊率80%以上

      5:完璧な凝集破壊

   ・写真は残しておいた方が、後で役に立ちます。

 3.接着特性の変動係数CVを小さくすること

  ・変動係数は 0.10以下であることが必要です

   注)変動係数CV=標準偏差σ / 平均値μ

     変動係数を正確に求めるためには、サンプル数は25個程度が必要です。

   注)一般に、凝集破壊率が高くなれば変動係数CVは小さくなります。

 4.接着部に加わる力が、接着の設計許容強度以下になるように設計すること。

   注)設計許容強度=設計基準強度(接着の実力強度)/安全率

   注)安全率は、1.5倍~2.0倍程度で十分です。

   注)設計基準強度(接着の実力強度)

     接着部が使用される最高温度における平均接着強度の1/101/20程度です。

◆接着はどのような力で結合しているのか

 接着剤と被着材料表面の分子同士が電気的に引き合う「分子間力」によって結合しています。

◆「分子間力」を大きくするには?

 分子の内部では電気的に+とーに分かれています。これを「分極」といいます。

 +ーが強く別れている分子を「極性が高い分子」、あまり強く別れていない分子を「極性が低い分子」、全く別れていない分子を「無極性の分子」と呼びます。

 接着剤の分子も被着材表面の分子も極性が高ければ、強く引き合います。

 「分子間力」の中で最も強い結合は「水素結合」です。

 接着剤と被着材料間に「水素結合」が形成できれば最も強い接着ができます。

 強い分子間力で引き合うためには、分子同士の距離を3~5オングストローム(1億分の1cm)以下くらいまで近づける必要があります。

凝集破壊率を高くして変動係数CVを小さくする手段

 1.接着前に接着面の表面改質を行って、表面の極性を高くして、接着面の表面張力を高くします

   表面改質には、

    ・短波長紫外線照射(低圧水銀ランプ照射、エキシマランプ照射など)

    ・プラズマ処理(大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理など)

    ・コロナ放電

    ・火炎処理

   などがあります。

 2.プライマーやカップリング剤を接着面に塗布します

   プライマーやカップリング剤は決して塗りすぎてはいけません。

◆接着面の表面張力はどのくらい高ければ良いか?

 一般的に、接着面の表面張力が36mN/mあれば接着しても問題のない状態であり、

 38mN/m以上あれば信頼性の高い接着が可能です。

◆接着層の内部応力

 ・接着剤は硬化する時に体積収縮を起こします。界面では接着剤が液体の時に結合しており、体積収縮時に追従して収縮できないため、界面の特に接着部の端部に大きな応力が働きます。この応力を「硬化収縮応力」と言います。

 ・接着剤を加熱して硬化する場合は、接着剤と被着材の線膨張係数が異なるため、硬化温度から室温までの冷却中に応力が発生します。この応力を「熱応力」と言います。

 ・使用中に接着部が高温や低温になると、接着剤と被着材との線膨張係数の違いによって、接着層に「熱応力」が働きます。「熱応力」は、特に低温で大きくなります。

◆硬化収縮応力の低減策

 ・硬化後の硬さができるだけ柔らかい接着剤を使用する。

 ・硬化収縮率ができるだけ小さな接着剤を使用する。

 ・急速硬化を避けて、できるだけゆっくりと硬化する。

  注)これは、応力緩和の時間を確保するためです。

 ・接着層の厚さを厚くする。(構造、要求機能によっては逆の場合もあります)

◆熱応力の低減策

 ・硬化後の硬さができるだけ柔らかい接着剤を使用する。

 ・ガラス転移温度(Tg)ができるだけ低い接着剤を使用する。

 ・接着剤と被着材料の線膨張係数の差を小さくする。

 ・急冷を避けて、できるだけゆっくりと冷却する。

  注)これは、応力緩和の温度と時間を確保するためです。

 ・接着層の厚さを厚くする。(構造、要求機能によっては逆の場合もあります)

◆接着部の脆弱箇所はどこか?

 接着部の端部の界面が接着部の最弱箇所です。

 接着端部の界面には、硬化収縮応力、熱応力、外力が加わった時の応力などが集中します。

 また、接着部に水がかかる場合、接着部への水分の浸入は、接着端部の界面からが最も多くなります。

 よって、界面破壊を避けて凝集破壊率を高くすることは、接着強度や接着耐久性の向上に非常に重要なことなのです。  

 

株式会社 原賀接着技術コンサルタント