≪接着・原賀塾≫

講師:(株)原賀接着技術コンサルタント

首席コンサルタント、工学博士

原賀康介

 

<第38回>   <前回第37回分>はこちら <次回第39回分>は未掲載

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pdfファイル版(第1回~第25回)販売のお知らせ

・<接着・原賀塾>の 第1回から第25回 を読みやすくまとめた「pdfファイル版」(A4版 全137ページ)を作成いたしました。
・このpdfファイルは、印刷、検索、テキスト・画像のコピー、編集など全てのpdf機能が使用できます。しおりも付いています。
・一部3,000円(消費税別)での販売とさせて頂きます。

・「個人単位での使用」に限定させていただきます。
 ご購入をご希望の方は、「下記の購入申込バナー」からお申し込み下さい。
・お申し込み受付後、pdfファイルと開封パスワード、Cv接着設計法計算シートのExcelファイル、請求書をメールでお送りします。
・受領後、翌月末までに銀行口座にお振り込みください。 

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≪無料セミナー≫

  『 接着の最弱点はここだ! 端部界面から考える信頼性設計 

 

 6月25日(水)15時から、日本プラズマトリート(株)とのコラボで、下記セミナーを開催いたします。
 約1時間程度のセミナーで、どなたでも≪無料≫でご参加いただけます。
 周囲の方々にもお知らせいただいて、多くの方々にご聴講頂きたいと思っております。

日  時 : 2025年6月25日(水)15:00~ 約1時間(Q&Aを含む)
タイトル : 『接着の最弱点はここだ! 端部界面から考える信頼性設計』
講  師 : (株)原賀接着技術コンサルタント 首席コンサルタント 原賀康介
方  式 : ZoomによるWEB開催
お申込み方法 : 下記URLからお申込み下さい。

         https://www.plasmatreat.co.jp/ja/plasmatreat-webinar/hsc-2320

 

講演概要 :

 接着部の破壊や劣化は、接着部の最弱箇所から始まります。

 品質・信頼性に優れた接着を達成するためには、接着部の最弱箇所を強化することが必要です。

 内部応力、応力集中、劣化のいずれの観点からも、最弱箇所は接着部の端部の界面です。

 接着部の端部の界面で破壊が生じると、破壊はクラック状に界面に拡大します。

 ここでは、最弱箇所の強化法について、内部応力、応力集中、劣化の低減と、表面改質による接着界面での結合強化について述べます。

 

トピックス:

 接着における最弱箇所

 接着部の端部界面が弱い理由

 内部応力、応力集中、劣化の低減法

 表面改質による接着界面での結合強化

 

 ご質問があれば、ZOOM登録ページの「質問とコメント」欄にご記入ください。ウェビナー内で取り上げてご回答させていただきます。

 ただし、いただいたご質問が多い場合には、全ての質問に対してお答えすることが出来ない場合があります。また、配信日が近づいてのご登録の場合やご質問の内容によっては、ご回答を控えさせていただく場合がございます。

*特定のプロジェクトに関するご質問にはお答えできません。

 

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12.7 疲労耐久性

(4)温度変化の繰り返しによる熱疲労

(4-4) 熱疲労と他の劣化因子の複合による劣化の促進

① 外力の負荷による加速

  接着部が外力を伝えたり、支えたりする用途では、高温/低温で生じる熱応力の繰り返しによる劣化だけでなく、定荷重劣化(クリープ)や繰り返し疲労劣化も同時に起こります。高温/低温の繰り返しによって接着界面にはく離が生じたり接着剤自体が破壊されると、外力を支える接着面積は小さくなり、そこに一定の荷重が負荷されていると、接着部に加わる応力値は高くなっていきます。接着部に加わる応力値が高くなるにつれて、定荷重劣化(クリープ)や繰り返し疲労劣化は加速されます。

 

② 接着部の吸水による加速

  <第19回>11.接着の内部応力」11.6 吸水によって生じる<吸水膨潤応力>」「(3)吸水した状態での高温、低温使用によるはく離」でも述べたように、接着剤や界面が吸水した状態で、0℃以下になると、水分は凍って体積膨張を生じるため、界面での剥離が生じやすくなります。また、高温では、水蒸気となり、界面に溜まって界面で剥離を生じやすくなります。界面に生じたはく離部に水分が侵入すると、0℃以下では体積膨張によるくさび効果でクラック状のはく離部を広げます。

 このため、高温/低温を繰り返す途中で吸水を起こすと、劣化は促進されます。

 

(4-5) 熱疲労試験における注意点

① 試験片では熱疲労耐久性はわからない

 冷熱サイクル試験は、一般に、<第36回>12-70Aに示したような、JIS等に規定された引張りせん断試験片を用いて行われています。この場合、被着体は板状、接着箇所は平面状の1箇所、接着面積は12.5mm×25mm、被着体の拘束はなし、外力の負荷も無し、という条件です。しかし、ここまで述べてきたように、被着体の拘束の有無、接着部の形状・寸法、被着体の厚さ・剛性、接着剤層の厚さなどにより、接着部に生じる応力は大きく変化します。これらの点から、試験片での結果と実際の接着部での結果が大きく食い違うことはしばしば起こります。簡単に言うと、規格の試験片では冷熱疲労耐久性はわからないと言うことです。

 熱疲労試験は、実際の部品を用いて、部品の拘束状態や外力の負荷なども考慮して実施する必要があります。

 

② 熱疲労試験での長期間強度の考え方

  熱疲労試験では、一定サイクル暴露ごとに取り出して破断試験を行い、横軸に繰り返しの回数を、縦軸に残存接着強度をプロットします。しかし、熱疲労試験、特に、ヒートサイクル試験は1サイクルに要する時間が長いため、せいぜい数百サイクル程度までしか試験を実施しないことも多々あります。その場合に、さらに長期間サイクル試験後の強度はどのように考えれば良いのでしょうか。

 まず、初期状態での凝集破壊状態を確認しておいて、一定サイクルごとの破断試験後にも凝集破壊の状態を観察します。一般に、200300サイクル程度暴露後まで、凝集破壊の状態が初期状態と変わらず、界面破壊に移行していないことが確認できれば、12-82Aのように、必要な回数まで直線外挿して劣化後の強度を推定すれば良いでしょう。凝集破壊にもかかわらず強度が徐々に低下するのは、接着剤の延性や塑性変形によるものと考えられます。

 一方、初期に凝集破壊であったものが、冷熱繰り返しの回数の増加とともに、界面破壊に移行する場合も多く見られます。このような場合は、Bに示すように、サイクル数が多くなると、徐々に強度低下は少なくなります。これは、接着部の周辺から界面破壊が進行すると、残った凝集破壊部分の長さが徐々に短くなっていくため、熱応力が小さくなっていくためと考えられます。ただ、長期サイクル試験後にどの程度の強度で安定するかは簡単にはわかりません。

 ABの試験では、一般に接着部に外部荷重は加えられていません。しかし、実際の製品の接着部では外力が加わる使われ方をする場合はどうなるでしょうか。繰返し回数の増加とともに、接着部の周囲から界面での破壊が拡がると、接着している面積は小さくなっていきます。この小さくなった面積に、一定の外力が加わると、接着部に加わる応力値は高くなります。そうなると、Cに示すように、接着強度ゼロに向かって強度低下していくことになります。製品の接着部に外力が加わる場合は、冷熱サイクル試験の途中から界面破壊部分が増加してきた場合は、BではなくCのパターンになることを考慮して、対策を講じなければなりません。 

 

 図12-82 熱疲労試験の劣化曲線の見方

 

【Zoomゼミ】第10回(2025年度) 接着適用技術者養成講座

~接着接合の要素技術の習得とその体系化~

<(一社)日本接着学会 構造接着・精密接着研究会の非会員も受講可能

<原賀康介紹介割引も適用できます>

 

■主催 : 一般社団法人日本接着学会 構造接着・精密接着研究会

■背景と目的

 広範囲の部品・機器での接着接合の適用拡大と、接着に要求される機能・特性の高度化によって、接着接合に関する品質不具合は増加しています。

 このような状況下において、2022年4月にはISO9001の接着版とも言えるISO21368が改訂されるなど、接着接合の信頼性・品質の向上が世界的レベルで要求されています。

 そこで、このような国際的な接着に関する高信頼性・高品質化の要求に応えるために、部品・機器製造企業で接着技術に関わっている技術者や、これから接着技術を学ぶ方を対象として「接着適用技術者養成講座」を開催しています。

 本講座の内容は、EWF(欧州溶接連盟)の接着技術教育カリキュラムの主要点をほぼ網羅しており、接着品質の向上と安定化に必要な要素技術(材料、強度・構造設計、接着工程、検査・品質管理など)とそれらの関連性について学び、製品の開発・設計・製造・品質業務に必要な知識を習得することを目的としています。

 なお、界面や化学、力学、統計などに詳しくない技術者にも理解しやすいように、理論に偏らず実践的な内容と考え方を説明します。

■日程

 4日間、合計24時間の座学

 前半:2025年10月29日(水),30日(木)   9:30~17:00(昼休み12:30~13:30)

 後半:2025年11月 5日(水), 6日(木)   9:30~17:00(昼休み12:30~13:30)

 ※オンライン開催(Zoomを利用予定)です。 

■講師

 大槻 直也(株式会社スリーボンド)

 山辺 秀敏(元東京理科大学)

 内藤 公喜(国立研究開発法人 物質・材料研究機構)

 北條 恵司(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

 原賀 康介(株式会社原賀接着技術コンサルタント)

■カリキュラム

 1日目 第1章 接着設計技術、接着生産技術

    第2章 接着の機能設計-接着接合の特徴・機能・効果と適用事例、接着の課題-

    第3章 接着の基礎とメカニズム、接着剤の選び方

 2日目 第4章 被着材の表面処理

    第5章 高品質接着を達成するための基本条件と作り込みの目標値

    第6章 接着部品の構造設計と材料設計

 3日目 第7章 接着接合部の力学

    第8章 特性・機能を低下させる内部応力

    第9章 接着部の必要強度とCv値の設計法『Cv接着設計法』

 4日目 第10章 接着の耐久性

    第11章 接着の特性・信頼性の向上とコストダウンを両立させる『複合接着接合法』

    第12章 接着の工程・設備・品質管理における留意点

 ※カリキュラムの詳細は、こちら をご覧ください。

■受講対象者

 ・各種機器の組立に接着を用いる設計・生産・品質関係技術者

 ・接着関連機器・設備メーカーや接着関連材料メーカーの技術者

 ・接着材料関係の技術者

 ・これから接着技術を学ぶ方

■自己確認テスト

 受講後に、自己確認テストを実施します。(点数不問)

 ※自己確認テスト回収後、1週間ほどで模範解答を配付します。自己採点していただきます。

■履修証明書

 全カリキュラムを受講し、自己確認テストを提出された方には、履修証明書を発行します。

 ※一部欠席者は、翌年の講座で欠席部分の受講と自己確認テストを提出されれば、履修証明書を発行します。(欠席部分の受講は無料です。)

■受講料(消費税別)(1名あたり)

① 構造接着・精密接着研究会の企業会員・団体会員・個人会員の方 45,000円

  ※企業会員の社員は人数制限なし、個人・団体会員は一名のみ

  ※企業・団体会員名簿は こちら を参照下さい。

② 構造接着・精密接着研究会非会員で日本接着学会の下記会員の方 60,000円

  法人会員(特別会員、維持会員、賛助会員)の社員・正会員 

  ※法人会員の社員は人数制限なし、正会員は本人のみ

  ※法人会員リストは こちら を参照下さい。

  ※日本接着学会法人会員に配布される「催し物特別優待券」は使用できません。

③ 学生(日本接着学会の学生会員であること)  無料

④ 第9回接着適用技術者養成講座(2024年度)の一部欠席者 無料。

  ※対象者は、備考欄に、前回欠席された章番号をご記入ください。

⑤ ①~④以外の場合  90,000円。

  ※研究会の役員からの紹介割引適用の場合は、60,000円となります。(備考欄に紹介者の役員氏名を記入ください) ← 「原賀康介紹介」とお書き下さい。

  ※当研究会非会員の受講者は、継続的に最新の接着技術を習得いただくために、講座受講後と次年度は、研究会で開催される研究講演会に無料で参加いただけます。(次年度以降の研究会入会は任意。)

■テキスト : pdfファイルのみとなります。

■詳細および受講申し込み方法

 構造接着・精密接着研究会のホームページ をご覧ください。

■申し込み締切日 : 2025年10月22日(水) 

■問い合わせ先

 一般社団法人日本接着学会 構造接着・精密接着研究会 事務局

 TEL: 045-414-2072 / FAX: 045-972-8887

 E-mail:mailto:jimu@struct-adhesion.sakura.ne.jp

 

③ 昇温/冷却速度 -ヒートサイクルとヒートショック-

  (4-4) で述べたように、高温と低温を急激に繰り返すと、被着体内部の温度勾配によって接着部はダメージを受けます。高温と低温をゆっくり繰り返すと、被着体内部の温度勾配は小さくなります。急激な温度変化を与えるヒートショック試験の方が、ゆっくりと温度変化を与えるヒートサイクル試験より厳しいのはこのためです。で、実際の部品を用いて試験を行うべきと述べましたが、昇温冷却の速度も実際の部品での温度変化の速度に合わせるべきです。なお、高温・低温での保持時間は、接着体全体が均一な温度になれば良く、それ以上に長くとる必要はありません。試験の前に、接着部に熱電対を挟むなどして、温度の時間経過を測定して決めるのが良いでしょう。

 

④ 温度範囲を広げた加速試験

高温域を広げる場合は、接着剤のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することは無駄です。それは、Tg以上の温度になると、接着剤の弾性率は大きく低下するため、熱応力は小さくなってしまうためです。高温域は、接着剤のTgか少し下の温度までとしましょう。

低温域を広げることは熱応力を増加させる効果があります。それは、一般に低温になるほど接着剤の弾性率が高くなるためです。低温域を広げて熱応力を高くすると、強度低下の速度は速くなるので、初期のスクリーニングなどで短時間に評価したい場合は、高温側は後回しとして、まずは、液体窒素(-196℃)中や、ドライアイスとエタノールを混合した液(約-70℃)中に浸漬するような極端な試験を行うこともあります。しかし、低温域を広げた試験が、製品の使用温度範囲の最低温度での試験に対して、どのくらいの加速になっているのかを求めるのは容易ではありません。

 

⑤ 外力の繰り返し疲労として扱えるか

  熱疲労も熱応力の繰り返しによる劣化なので、温度変化を与える代わりに外力の繰り返しで試験ができれば、短時間で高サイクルの評価ができます。

  やり方としては、温度変化に伴って接着部に生じる応力値をFEMA(有限要素法解析)などで計算して求め、その応力を外力として加えて、一定サイクルごとに取り出して残存強度を測定したり、破壊までの回数を求めてS-N線図を描きます。

  しかし、金属やセラミックスなどの材料単体や、金属同士の溶接体のように、低温から高温の広範囲の温度域で物性が変化しない場合はよいのですが、接着物の場合は、外力の繰り返し試験を実施する温度での接着剤の物性や界面での接着力と、熱応力が大きくなる温度での接着剤の物性や界面での接着力の違いによる影響なども考慮せねばならないため、接着剤の場合は簡単ではありません。

 

(4-6) 熱サイクル疲労の改善方法

(4-4)で述べたように、接着層の厚さは可能な限り厚くすることです。隅肉接着の場合は、二つの部品を密着させず、若干の隙間を作ると良いでしょう。

接着剤の硬さは軟らかいほど、破断伸び率は大きいほど変形追従性は増加します。

熱応力がゼロとなる温度は、接着剤を硬化したときの温度です。接着剤の硬化温度と製品の使用温度範囲の最高温度(または、接着剤のガラス転移温度Tg)との温度差と、接着剤の硬化温度と製品の使用温度範囲の最低温度の温度差を考慮して、室温硬化型の接着剤でも60℃や80℃などの中温で硬化させるなど、最適な硬化温度を探ることも必要です。

 

 

 <第26回>から13回にわたって<接着の耐久性(劣化)>について述べてきました。

 次回からは、接着剤とその他の接合法を併用する<複合接着接合法>について述べたいと思います。

 

 

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