≪接着・原賀塾≫
講師:(株)原賀接着技術コンサルタント
首席コンサルタント、工学博士
原賀康介
==============================================
pdfファイル版(第1回~第25回)販売のお知らせ
・<接着・原賀塾>の 第1回から第25回 を読みやすくまとめた「pdfファイル版」(A4版 全137ページ)を作成いたしました。
・このpdfファイルは、印刷、検索、テキスト・画像のコピー、編集など全てのpdf機能が使用できます。しおりも付いています。
・一部3,000円(消費税別)での販売とさせて頂きます。
・「個人単位での使用」に限定させていただきます。
ご購入をご希望の方は、「下記の購入申込バナー」からお申し込み下さい。
・お申し込み受付後、pdfファイルと開封パスワード、Cv接着設計法計算シートのExcelファイル、請求書をメールでお送りします。
・受領後、翌月末までに銀行口座にお振り込みください。
==============================================
≪無料セミナー≫ 『 接着の最弱点はここだ! 端部界面から考える信頼性設計 』
6月25日(水)15時から、日本プラズマトリート(株)とのコラボで、下記セミナーを開催いたします。 https://www.plasmatreat.co.jp/ja/plasmatreat-webinar/hsc-2320
講演概要 : 接着部の破壊や劣化は、接着部の最弱箇所から始まります。 品質・信頼性に優れた接着を達成するためには、接着部の最弱箇所を強化することが必要です。 内部応力、応力集中、劣化のいずれの観点からも、最弱箇所は接着部の端部の界面です。 接着部の端部の界面で破壊が生じると、破壊はクラック状に界面に拡大します。 ここでは、最弱箇所の強化法について、内部応力、応力集中、劣化の低減と、表面改質による接着界面での結合強化について述べます。
トピックス: 接着における最弱箇所 接着部の端部界面が弱い理由 内部応力、応力集中、劣化の低減法 表面改質による接着界面での結合強化
ご質問があれば、ZOOM登録ページの「質問とコメント」欄にご記入ください。ウェビナー内で取り上げてご回答させていただきます。 ただし、いただいたご質問が多い場合には、全ての質問に対してお答えすることが出来ない場合があります。また、配信日が近づいてのご登録の場合やご質問の内容によっては、ご回答を控えさせていただく場合がございます。 *特定のプロジェクトに関するご質問にはお答えできません。
|
==============================================
<複合接着接合法>とは、接着剤と接着以外の接合方法を併用する方法で、<併用接合法>や<ハイブリッド接合法>などとも呼ばれています。
<複合接着接合法>の目的は、接着の欠点や、併用する接合法の欠点を補完し合って、接合の特性・機能・品質・信頼性を向上させるとともに、製造工程の合理化によってコストダウンを図ることです。
よく知られているのは、接着剤とスポット溶接(抵抗点溶接)を併用する方法で、<ウェルドボンディング(WB)>と呼ばれています。自動車の車体組立などで多用されています。
接着剤としては、一液加熱硬化型エポキシ系接着剤や二液室温硬化型アクリル系接着剤(SGA)、一液加熱硬化型塩ビプラスチゾルなどが用いられます。接合可能な部材は、スポット溶接ができる金属材料同士に限られます。
接合のプロセスは図13-1に示すように、接合部に接着剤を塗布して貼り合わせ、接着剤が未硬化の状態でスポット溶接を行います。スポット溶接は、電極で加圧した状態で通電を行い、金属同士の接触部の抵抗発熱によって金属を溶融させてナゲットと呼ばれる溶融凝固部を作る方法です。溶接が終わった段階では接着剤はまだ硬化していないので、後の工程で硬化させる必要があります。
接着剤は絶縁物で電気を通さないのに、なぜ通電ができるのか疑問に思われるかもしれませんが、電極の加圧力は一般に数kN(数100kgf)と高いため、液状やペースト状の接着剤を押しのけて金属同士が接触するためです。最適な溶接条件は、用いる接着剤の組成によって、溶接のみの場合とは若干異なります。この点については、後述します。
図13-1 ウェルドボンディング(WB)の接合プロセス
しかし、電極の加圧力だけで流動排除されないフィル状接着剤や、あらかじめ金属板にプレコートされて乾燥皮膜になっている接着剤では、通電ができません。このような場合には、図13-2に示すように、分流板を用いて予備通電で金属を発熱させて、接着剤を軟化や溶融させて金属創始を接触させた後に加圧通電することで溶接することができます。
(出典)原賀康介;“ウェルドボンド法”,工業材料, Vol.37, No.12, P.94 (1989).
図13-2 非流動性接着剤の分流板による加熱溶融ウェルドボンディング
分流板は面倒という場合には、図13-3に示すように、一方の金属板に突起(プロジェクション)を形成して、突起部で接着剤を突き破って金属板同士を接触させる方法があります。電流が突起部分に集中するので、小電流でも電流密度を高くでき、溶接する部材の板厚が異なる場合でも確実なナゲットを形成できます。発熱量が少ないため、接着剤への熱影響を減らしたり、薄板では溶接による歪みを少なくすることができます。その他に、レーザー溶接などとの併用も可能です。
(出典) JWES (溶接情報センター) http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0080030100
図13-3 プロジェクション・スポット溶接の例
溶接を行うと、溶融部の直近の接着剤が熱影響を受けたり、はみ出したり、飛び散ったりすることがありますが、これを避けるために、溶接を行った後で低粘度の接着剤を重ね合せ部に浸透させる方法もあります。
接着剤とリベット(ファスナー)を併用する方法で、<リベットボンディング(RB)>と呼ばれています。接合する両部品に、あらかじめリベットを差し込むための穴加工が必要です。様々な異種材料の組合せでも接合ができる、片面作業や穴で位置が決まるなど作業しやすい、幅広い種類の接着剤が使用できる、などの特徴のため、さまざまな部品組立で多用されています。
接合のプロセスは図13-4に示すように、あらかじめ穴を設けた接合部に接着剤を塗布して貼り合わせ、リベットを差し込み、リベットに差し込まれているマンドレルという棒をリベッターと呼ばれる工具で引張ります。マンドレルによってリベットの先端部が押しつぶされて締結され、その後、マンドレルはくびれ部で切断されます。リベットでの締結が終わった段階では接着剤はまだ硬化していないので、後の工程で硬化させます。
図13-4 リベットボンディング(RB)の接合プロセス
リベットには多くの種類が有り、高強度が必要な場合は、図13-5に示すような、2ピースタイプも使用されます。
図13-5 2ピースタイプ・ブラインドリベットの締結プロセス
図13-6は、ブラインドナットによる締結です。ブラインドナットは、もともと単体の板にナットを固定するために使われるものですが、接着剤を塗布して貼り合わせた二枚の板を締結すると<複合接着接合>となります。締結後にナット部分に別の部品をボルトで固定することができ便利です。
(出典) POPブラインドナット資料 https://www.stanleyengineeredfastening.com/-/media/Web/SEF/Assets/jp/product_guide/POP-BLIND-NUT-CATALOG.pdf
図13-6 ブラインドナットによる締結プロセス
セルフピアスリベット(SPR)は打ち込みリベットとも呼ばれます。複合接着接合法では、あらかじめ接着剤を塗布して貼り合わせ、未硬化の状態でセルフピアスリベット(SPR)で締結します。図13-7は、セルフピアスリベット(SPR)による締結プロセスです。接着剤を塗布して貼り合わせた二枚の板をポンチとダイの間に挟んで、セルフピアスリベット(SPR)をセットして、ポンチでセルフピアスリベット(SPR)を板に押し込みます。押し込まれたセルフピアスリベット(SPR)は板を突き破って、ダイによって押し広げられます。この方法は、下穴が不要、異種材料でも接合ができる、幅広い種類の接着剤が使用できるなどの特徴が有ります。
(出典) 原賀康介,金坂敏行,馬淵 晃,船崎 敦,高山直樹,山本三幸,高橋伸一郎;“自動車車体軽量化のためのアルミ/アルミ,アルミ/鋼の各種接合方法の強度特性”,日本接着学会誌,Vol.34,No. 11,P.432-438(1998).
図13-7 セルフピアスリベットによる締結プロセス
【Zoomゼミ】第10回(2025年度) 接着適用技術者養成講座 ~接着接合の要素技術の習得とその体系化~ <(一社)日本接着学会 構造接着・精密接着研究会の非会員も受講可能> <原賀康介紹介割引も適用できます>
■主催 : 一般社団法人日本接着学会 構造接着・精密接着研究会 ■背景と目的 広範囲の部品・機器での接着接合の適用拡大と、接着に要求される機能・特性の高度化によって、接着接合に関する品質不具合は増加しています。 このような状況下において、2022年4月にはISO9001の接着版とも言えるISO21368が改訂されるなど、接着接合の信頼性・品質の向上が世界的レベルで要求されています。 そこで、このような国際的な接着に関する高信頼性・高品質化の要求に応えるために、部品・機器製造企業で接着技術に関わっている技術者や、これから接着技術を学ぶ方を対象として「接着適用技術者養成講座」を開催しています。 本講座の内容は、EWF(欧州溶接連盟)の接着技術教育カリキュラムの主要点をほぼ網羅しており、接着品質の向上と安定化に必要な要素技術(材料、強度・構造設計、接着工程、検査・品質管理など)とそれらの関連性について学び、製品の開発・設計・製造・品質業務に必要な知識を習得することを目的としています。 なお、界面や化学、力学、統計などに詳しくない技術者にも理解しやすいように、理論に偏らず実践的な内容と考え方を説明します。 ■日程 4日間、合計24時間の座学 前半:2025年10月29日(水),30日(木) 9:30~17:00(昼休み12:30~13:30) 後半:2025年11月 5日(水), 6日(木) 9:30~17:00(昼休み12:30~13:30) ※オンライン開催(Zoomを利用予定)です。 ■講師 大槻 直也(株式会社スリーボンド) 山辺 秀敏(元東京理科大学) 内藤 公喜(国立研究開発法人 物質・材料研究機構) 北條 恵司(国立研究開発法人 産業技術総合研究所) 原賀 康介(株式会社原賀接着技術コンサルタント) ■カリキュラム 1日目 第1章 接着設計技術、接着生産技術 第2章 接着の機能設計-接着接合の特徴・機能・効果と適用事例、接着の課題- 第3章 接着の基礎とメカニズム、接着剤の選び方 2日目 第4章 被着材の表面処理 第5章 高品質接着を達成するための基本条件と作り込みの目標値 第6章 接着部品の構造設計と材料設計 3日目 第7章 接着接合部の力学 第8章 特性・機能を低下させる内部応力 第9章 接着部の必要強度とCv値の設計法『Cv接着設計法』 4日目 第10章 接着の耐久性 第11章 接着の特性・信頼性の向上とコストダウンを両立させる『複合接着接合法』 第12章 接着の工程・設備・品質管理における留意点 ※カリキュラムの詳細は、こちら をご覧ください。 ■受講対象者 ・各種機器の組立に接着を用いる設計・生産・品質関係技術者 ・接着関連機器・設備メーカーや接着関連材料メーカーの技術者 ・接着材料関係の技術者 ・これから接着技術を学ぶ方 ■自己確認テスト 受講後に、自己確認テストを実施します。(点数不問) ※自己確認テスト回収後、1週間ほどで模範解答を配付します。自己採点していただきます。 ■履修証明書 全カリキュラムを受講し、自己確認テストを提出された方には、履修証明書を発行します。 ※一部欠席者は、翌年の講座で欠席部分の受講と自己確認テストを提出されれば、履修証明書を発行します。(欠席部分の受講は無料です。) ■受講料(消費税別)(1名あたり) ① 構造接着・精密接着研究会の企業会員・団体会員・個人会員の方 45,000円 ※企業会員の社員は人数制限なし、個人・団体会員は一名のみ ※企業・団体会員名簿は こちら を参照下さい。 ② 構造接着・精密接着研究会非会員で日本接着学会の下記会員の方 60,000円 法人会員(特別会員、維持会員、賛助会員)の社員・正会員 ※法人会員の社員は人数制限なし、正会員は本人のみ ※法人会員リストは こちら を参照下さい。 ※日本接着学会法人会員に配布される「催し物特別優待券」は使用できません。 ③ 学生(日本接着学会の学生会員であること) 無料 ④ 第9回接着適用技術者養成講座(2024年度)の一部欠席者 無料。 ※対象者は、備考欄に、前回欠席された章番号をご記入ください。 ⑤ ①~④以外の場合 90,000円。 ※研究会の役員からの紹介割引適用の場合は、60,000円となります。(備考欄に紹介者の役員氏名を記入ください) ← 「原賀康介紹介」とお書き下さい。 ※当研究会非会員の受講者は、継続的に最新の接着技術を習得いただくために、講座受講後と次年度は、研究会で開催される研究講演会に無料で参加いただけます。(次年度以降の研究会入会は任意。) ■テキスト : pdfファイルのみとなります。 ■詳細および受講申し込み方法 構造接着・精密接着研究会のホームページ をご覧ください。 ■申し込み締切日 : 2025年10月22日(水) ■問い合わせ先 一般社団法人日本接着学会 構造接着・精密接着研究会 事務局 TEL: 045-414-2072 / FAX: 045-972-8887 E-mail:mailto:jimu@struct-adhesion.sakura.ne.jp |
図13-8は、メカニカルクリンチングによる締結プロスです。複合接着接合法では、あらかじめ接着剤を塗布して貼り合わせた二枚の板を、未硬化の状態でポンチとダイの間に挟んで、ポンチで板を塑性変形させながらダイに押し込みます。押し込まれると上板が下板に食い込むように拡がって締結されます。この方法は、下穴が不要、リベット(ファスナー)やセルフピアスリベット(SPR)などの締結部品が不要、異種材料でも接合ができる、幅広い種類の接着剤が使用できる、などの特徴が有ります。
(出典) 原賀康介,金坂敏行,馬淵 晃,船崎 敦,高山直樹,山本三幸,高橋伸一郎;“自動車車体軽量化のためのアルミ/アルミ,アルミ/鋼の各種接合方法の強度特性”,日本接着学会誌,Vol.34,No. 11,P.432-438(1998).
図13-8 メカニカルクリンチングによる締結プロセス
<複合接着接合法>で接着と併用する接合方法は(1)~(4)に限られているわけではありません。ねじやボルト、スタッドボルト、プラスチック部品の場合はスナップフィット、木材では釘、軸嵌合では焼きばめなどさまざまな締結法との併用が可能です。
次回は、接着とその他の接合の課題が、複合接着接合法によって、どのように改善されるのかについて述べていきます。
【PR】コンサルタント業務を受け付けています。 弊社では、企業での開発や不具合対策の支援や社員向け教育などの業務を行っています。 課題を有しておられる場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。 詳細はこちらをご覧ください。 |
<接着・原賀塾>の掲載内容は、著作権法によって保護されており、著作権は(株)原賀接着技術コンサルタントに帰属します。引用、転載などの際は弊社までご連絡ください。(会社内や団体・学術機関・研究機関内でのご活用に関してはこの限りではありません。) |
-------------------------------------------------------------------------------------
<前回第38回分>はこちら <次回第40回分>は未掲載 <目次>はこちら
株式会社 原賀接着技術コンサルタント