≪接着・原賀塾≫
講師:(株)原賀接着技術コンサルタント
首席コンサルタント、工学博士
原賀康介
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pdfファイル版(第1回~第25回)販売のお知らせ
・<接着・原賀塾>の 第1回から第25回 を読みやすくまとめた「pdfファイル版」(A4版 全137ページ)を作成いたしました。
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13.複合接着接合法
図13-34に示すような制御盤や操作盤は、発電所、工場、交通機関など広範囲の産業分野やインフラ、ビル関係で使用されています。このような制御盤や操作盤の金属筐体は、多品種小ロット生産の代表とされ、従来から溶接やボルト・ナットでの手作業での組み立てが主流です。筐体には、強度・剛性、耐震性、寸法精度、シール性、意匠性などが要求され、材質は、鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミ板、ステンレス鋼板などが使用されています。
(出典)三菱電機(株)カタログ「接着・リベット併用組立法MELARS」 (2006).
図13-34 接着・リベット併用法で組み立てられた制御盤、操作盤の事例
アーク溶接での組み立てでは、熱歪みによる変形とその修正、ステンレスでは溶接焼けとその除去、めっき鋼板では溶接部の塗装補修、溶接技能者の高齢化による不足など多くの問題があり、スポット溶接での組み立てでは、溶接機のふところ長さの制限から大型の物は製造できない、シール性がないため組み立て後にシール作業が必要、点接合のため剛性に劣る、ボルト・ナットでは、外観、剛性、シール性、組み立てに時間がかかるなどの問題がありました。
そこで、接着による組み立てが採用されるようになりました。接着接合を採用することにより、組み立て時に歪みが生じない、面接合により剛性が向上する、薄板化しても溶接と同等の強度・剛性が確保できる、接合と同時にシールができる、熟練技能が不要、などの効果が得られています。一部の部品には非磁性が要求される場合もあり異種金属の接合が必要ですが、接着は容易に対応可能であり、接着剤の絶縁性によって電食も防止できます。しかし、接着剤による組み立てでは、接着剤が硬化するまでの圧締が課題です。そこで、リベット(ファスナー)を併用することで解決されています。リベット(ファスナー)は、電着塗装時の電気的導通の確保、アースや電磁シールド性の確保、焼付け塗装時の高温での接着剤の軟化に伴う変形の防止、接着剤の長期クリープの防止、火災により制御盤が延焼するなど非常時での最低限の形状維持による安全性の確保、などの役割も果たしています。図13-34の筐体は、1994年(31年前)頃から製造が開始された接着剤とリベットの併用で組み立てられたものの事例です。接着剤は、油面接着性をはじめとする作業性と強度・耐久性に優れた二液室温硬化型変性アクリル系(SGA)が使用されています。
図13-35(A)は、接着・リベット併用法で製造された高さ2300mm、幅、奥行き800mm(両面扉)の工業プラント用制御盤の例です。接合部を面とするために、【B】に見られるように、板金の折り曲げ加工で糊しろが設けられています。底板と側板の接合部など高い強度と剛性が必要な部分では、底板、天板、側板のコーナー部に作り込まれたコーナー金具と、【C】に示すように、接着で角パイプ構造が形成されています。また、扉のヒンジ部には大きな力が加わりますが、【D】のような構造とすることで問題の無い強度が確保されています。
(出典)眼龍裕司、原賀康介、八木直樹、駒澤吉郎、中島義信: “接着・リベット併用による配電盤・制御盤の組立技術”,三菱電機技報,Vol.69,No. 12,P.1104-1108 (1995).
(出典)原賀康介、眼龍裕司、中島義信、八木直樹: “接着・リベット併用による配電盤・制御盤の組立技術”,日本接着学会誌,Vol.32,No.1,P.14-19 (1996).
(出典)緑川聡、永田一也、原賀康介; “接着剤とリベットの併用による板金構造物の組立技術「MELARS」”, 接着の技術,Vol.19,No.1,P.85-88 (1999).
(出典)三菱電機(株)カタログ「接着・リベット併用組立法MELARS」 (2006).
図13-35 接着・リベット併用組み立て筐体の構造例(800w×800D×2300H、両面扉)
片手で持てる程度の部品であれば、リベット穴で位置決めすることは容易ですが、大きな重量物となると容易ではありません。そこで、図13-36【A】に示すように、板金に円錐台形状のカウンターシンク(皿絞り)加工がなされています。【B】のように、接着剤を塗布した部品を適当な位置で合わせてずらして噛み合わせると、接着剤の欠き取りや接着部周辺への付着もなく、容易にリベット穴を合わせることができます。
図13-36 カウンタシンクを利用した位置合わせの簡易化
ここで述べた制御盤や操作盤は、多くの機器で使用されるため、1箇所の板金工場で製造されるものではなく、それぞれの機器を製造する全国の製造拠点やその外注工場など多くの場所で製造されるものです。ここで課題となるのは、接着作業の信頼性の確保です。
まず、接着面の複雑・高度な表面処理は行えません。また、二液型接着剤の計量・混合の精度も問題です。これらの点に関しては、非常に優れた油面接着性を有し、二液の配合比も目分量程度で十分で、簡易混合でもきちんと硬化して性能を発揮できる二液室温硬化型変性アクリル系接着剤(SGA)の採用で解決されています。
もう一つの大きな課題は、接着すべき部分にきちんと接着剤が塗布されて、きちんと硬化しているかの確認方法です。一般的には、接着部の周辺に接着剤がはみ出しているか、はみ出した接着剤はきちんと硬化しているかで確認します。しかし、制御盤や操作盤のような構造体では、図13-35【C】のように、接着部が見えない場合も多くあります。あるいは、接着剤のはみ出しが許されない箇所もあります。そのため、図13-37に示すように、接着部の目で見える側に、小さな<確認穴>を数カ所設けています。接合後、確認穴から接着剤がはみ出していれば内部にも接着剤が拡がっている、はみ出した接着剤がきちんと固まっていれば内部の接着剤も固まっていると判断できます。接着剤が<確認穴>からはみ出していない場合は、打音検査や超音波検査で接着剤の有無を確認します。
図13-37 確認穴によるはみ出し部が見えない部分での塗布、硬化の確認方法
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図13-38には、鋼板の溶接組み立て、鋼板または亜鉛めっき鋼板の接着・リベット併用組み立て、鉄鋼メーカーで亜鉛めっき鋼板に塗装したプレコート鋼板を用いた接着・リベット併用組み立ての製造工程の比較を示しました。接着・リベット併用組立化によって、溶接歪み除去関連の作業がなくなり、さらに、プレコート鋼板の接着・リベット併用組み立てでは塗装工程も不要となっています。表13-1には、接着・リベット併用化による板厚、重量、作業時間、コスト、工期などの低減効果をアーク溶接の場合と比較して示しています。図13-39には、原料採掘段階から筐体完成までの全エネルギー使用量の変化をアーク溶接の場合と比較して示しています。接着剤とリベットを併用するリベットボンディング化によって、大きなエネルギー削減効果が得られていることがわかります。
(出典)原賀康介:”電気機器における構造接着技術”、溶接学会誌、Vol.70,No.2,253 (2001).
(出典)緑川聡、永田一也、原賀康介;“接着剤とリベットの併用による板金構造物の組立技術「MELARS」”,接着の技術,Vol.19,No.1,P.85-88 (1999).
(出典)三菱電機(株)カタログ「接着・リベット併用組立法MELARS」(2006).
図13-38 溶接と接着・リベット併用組立による製造工程の比較
表13-1 接着・リベット併用組立による効果(溶接との比較)(800W×800D×2300Hの両面扉筐体)
(出典)原賀康介:”電気機器における構造接着技術”、溶接学会誌、Vol.70,No.2,253 (2001).
(出典)原賀康介:”電気機器における構造接着技術”、溶接学会誌、Vol.70, No.2, 253 (2001).
図13-39 原料採掘段階から筐体完成までの全エネルギー使用量の変化
(800W×800D×2300H の 両面扉筐体)
リベットボンディングが適用された制御盤や操作盤などは、1994年頃から製造されていますが、大きな問題は生じていません。
【Zoomゼミ】第10回(2025年度) 接着適用技術者養成講座 ~接着接合の要素技術の習得とその体系化~ <(一社)日本接着学会 構造接着・精密接着研究会の非会員も受講可能> <原賀康介紹介割引も適用できます>
■主催 : 一般社団法人日本接着学会 構造接着・精密接着研究会 ■背景と目的 広範囲の部品・機器での接着接合の適用拡大と、接着に要求される機能・特性の高度化によって、接着接合に関する品質不具合は増加しています。 このような状況下において、2022年4月にはISO9001の接着版とも言えるISO21368が改訂されるなど、接着接合の信頼性・品質の向上が世界的レベルで要求されています。 そこで、このような国際的な接着に関する高信頼性・高品質化の要求に応えるために、部品・機器製造企業で接着技術に関わっている技術者や、これから接着技術を学ぶ方を対象として「接着適用技術者養成講座」を開催しています。 本講座の内容は、EWF(欧州溶接連盟)の接着技術教育カリキュラムの主要点をほぼ網羅しており、接着品質の向上と安定化に必要な要素技術(材料、強度・構造設計、接着工程、検査・品質管理など)とそれらの関連性について学び、製品の開発・設計・製造・品質業務に必要な知識を習得することを目的としています。 なお、界面や化学、力学、統計などに詳しくない技術者にも理解しやすいように、理論に偏らず実践的な内容と考え方を説明します。 ■日程 4日間、合計24時間の座学 前半:2025年10月29日(水),30日(木) 9:30~17:00(昼休み12:30~13:30) 後半:2025年11月 5日(水), 6日(木) 9:30~17:00(昼休み12:30~13:30) ※オンライン開催(Zoomを利用予定)です。 ■講師 大槻 直也(株式会社スリーボンド) 山辺 秀敏(元東京理科大学) 内藤 公喜(国立研究開発法人 物質・材料研究機構) 北條 恵司(国立研究開発法人 産業技術総合研究所) 原賀 康介(株式会社原賀接着技術コンサルタント) ■カリキュラム 1日目 第1章 接着設計技術、接着生産技術 第2章 接着の機能設計-接着接合の特徴・機能・効果と適用事例、接着の課題- 第3章 接着の基礎とメカニズム、接着剤の選び方 2日目 第4章 被着材の表面処理 第5章 高品質接着を達成するための基本条件と作り込みの目標値 第6章 接着部品の構造設計と材料設計 3日目 第7章 接着接合部の力学 第8章 特性・機能を低下させる内部応力 第9章 接着部の必要強度とCv値の設計法『Cv接着設計法』 4日目 第10章 接着の耐久性 第11章 接着の特性・信頼性の向上とコストダウンを両立させる『複合接着接合法』 第12章 接着の工程・設備・品質管理における留意点 ※カリキュラムの詳細は、こちら をご覧ください。 ■受講対象者 ・各種機器の組立に接着を用いる設計・生産・品質関係技術者 ・接着関連機器・設備メーカーや接着関連材料メーカーの技術者 ・接着材料関係の技術者 ・これから接着技術を学ぶ方 ■自己確認テスト 受講後に、自己確認テストを実施します。(点数不問) ※自己確認テスト回収後、1週間ほどで模範解答を配付します。自己採点していただきます。 ■履修証明書 全カリキュラムを受講し、自己確認テストを提出された方には、履修証明書を発行します。 ※一部欠席者は、翌年の講座で欠席部分の受講と自己確認テストを提出されれば、履修証明書を発行します。(欠席部分の受講は無料です。) ■受講料(消費税別)(1名あたり) ① 構造接着・精密接着研究会の企業会員・団体会員・個人会員の方 45,000円 ※企業会員の社員は人数制限なし、個人・団体会員は一名のみ ※企業・団体会員名簿は こちら を参照下さい。 ② 構造接着・精密接着研究会非会員で日本接着学会の下記会員の方 60,000円 法人会員(特別会員、維持会員、賛助会員)の社員・正会員 ※法人会員の社員は人数制限なし、正会員は本人のみ ※法人会員リストは こちら を参照下さい。 ※日本接着学会法人会員に配布される「催し物特別優待券」は使用できません。 ③ 学生(日本接着学会の学生会員であること) 無料 ④ 第9回接着適用技術者養成講座(2024年度)の一部欠席者 無料。 ※対象者は、備考欄に、前回欠席された章番号をご記入ください。 ⑤ ①~④以外の場合 90,000円。 ※研究会の役員からの紹介割引適用の場合は、60,000円となります。(備考欄に紹介者の役員氏名を記入ください) ← 「原賀康介紹介」とお書き下さい。 ※当研究会非会員の受講者は、継続的に最新の接着技術を習得いただくために、講座受講後と次年度は、研究会で開催される研究講演会に無料で参加いただけます。(次年度以降の研究会入会は任意。) ■テキスト : pdfファイルのみとなります。 ■詳細および受講申し込み方法 構造接着・精密接着研究会のホームページ をご覧ください。 ■申し込み締切日 : 2025年10月22日(水) ■問い合わせ先 一般社団法人日本接着学会 構造接着・精密接着研究会 事務局 TEL: 045-414-2072 / FAX: 045-972-8887 E-mail:mailto:jimu@struct-adhesion.sakura.ne.jp |
各種の競技場やイベント会場で見られる大型映像装置、空港や鉄道駅などの発着情報表示板、ビル壁面の大型広告表示装置など、大型の映像・表示装置はなじみのものとなっています。これらの大画面は一体でできるものではなく、図13-40に示すようなモジュール筐体を縦横に多数並べて大画面が構成されています。モジュール筐体は、表示モジュールが縦横に取り付けられるため、図に示すように、スカスカの構造になっています。そのため、膨れ、凹み、うねりなどの変形が生じやすく、モジュール筐体に変形が生じると、隣接するモジュール筐体との間に隙間が生じたり、表示面に凹凸が生じたりして、画像の精細さに影響します。
そこで、接合歪みが小さな組立法として接着接合が用いられていますが、組み立て作業性、接合信頼性の点からリベットが併用されています。ここでも、接着剤には、油が付着した面でも接着ができる二液室温硬化型変性アクリル系接着剤(SGA)が用いられています。
リベットの頭が筐体の表面に出っ張ると筐体間にに隙間が生じるので、接合面を外面以外の部分に配置したり、皿頭のリベットが使用されたり、カウンターシンク加工がなされています。
(出典)原賀康介著;「高信頼性接着の実務―事例と信頼性の考え方―」,P.23,日刊工業新聞社刊 (2013).
図13-40 大型映像装置用モジュール筐体
次回も引き続き複合接着接合法の適用例を紹介します。
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