≪接着・原賀塾≫

講師:(株)原賀接着技術コンサルタント

首席コンサルタント、工学博士

原賀康介

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pdfファイル版(第1回~第56回)販売のお知らせ

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15.接着剤の種類、特徴と使用上の注意点

 「どのような接着剤を用いれば良いのか」というのはなかなか難しいものです。接着剤には多くの種類が有り、種類によって相手との相性、使い方や特性は大きく異なります。ここでは、接着剤にはどのようなものが有るのか、代表的な接着剤の種類と特徴、使用上の注意点などについて述べていきます。特徴の中でも、特に重要なのは、欠点をよく知ると言うことです。接着に関する不具合の多くは、接着剤の欠点によるものです。

 

 15.1 接着剤とは

 JIS K 6800「接着剤・接着用語」では、<接着剤>とは、「物体の間に介在することによって物体を結合することができる物質」と示されています。介在して結合するためには、<第13回>の「9.凝集破壊率を高くするには 9.2 分子間力による結合(7)接着剤と被着材表面との分子間の距離」で述べたように、接着剤と被着材表面の分子同士が35A(オングストローム)程度まで近づくことが必要なため、固体の接着剤でも、接着する時には必ず<液状>になっています。<粘着材>は、粘弾性特性によって、接着する時には液体として、接着後は固体として作用するものです。

 

 15.2 接着剤の分類

 どのような接着剤があるのかを知るためには、接着剤の分類を知る必要があります。以下に、主成分による分類、形態・固化(硬化)の方式による分類、特性・機能による分類について示します。

 

(1)主成分による分類

 15-1には、接着剤の主成分による分類を示しました。

図15-1 接着剤の主成分による分類

 主成分を大きく分けると、有機系のものと無機系のものに分けられます。無機系のものは、水ガラス系、セメント系、セラミックス系などに分けられます。有機系のものは、合成系と天然系に大別されます。

 天然系のものとしては、昔から使われているデンプン系、タンパク系、天然ゴム系、漆・松ヤニ・蝋、アスファルト系などに分けられます。

 合成樹脂系は、熱可塑性樹脂系、熱硬化性樹脂系、エラストマー系(ゴム系)に大別され、それぞれの系内にも多くの種類があります。高温では液状となる熱可塑性樹脂系の代表的なものは、木工用でよく使われている白濁乳液状(エマルジョン)の酢酸ビニル系、ホットメルト接着剤にも使われているエチレン・酢酸ビニル樹脂系やポリオレフィン系などがあります。一旦硬化すると熱をかけても溶融しない熱硬化性樹脂系の接着剤は、接着強度や耐久性に優れるものが多く、多くの産業分野で用いられています。代表的なものとしては、エポキシ系、アクリル系(反応硬化型)、ポリウレタン系、シリコーン系など、高温用としては、ブレーキシューの接着などに用いられているフェノール系や電子部品などで用いられているポリイミド系などがあります。なお、蛇足ですが、<熱硬化性樹脂>の<熱硬化>というのは、「熱を加えて硬化させる」と言うことではなく、「反応して三次元の網目構造になるため、高温になっても溶融しない」ということなので、二液型エポキシのように、室温だけで硬化するものも有るので、間違わないでください。

 エラストマー系はゴム系とも呼ばれており、代表的なものは、何と言っても、長年にわたって万能的に使われている溶液形のクロロプレン系接着剤でしょう。低温から高温まで広範囲の温度域で特性が変化しにくいシリコーン系接着剤も様々な分野で使われています。また、比較的新しいものとしては、変成シリコーン系接着剤があります。名前に<シリコーン>と付いていますが、シリコーン系では無く、アクリルやウレタン、エポキシなどの一部がシリコーンのようになっていると言うことなので、間違わないようにしてください。

 実際の接着剤は、種々の特性・機能を付与するために、主成分の他に各種の樹脂やエラストマー(ゴム)、充填剤、溶媒(溶剤、水)などが添加されています。

 

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(2)形態・固化(硬化)の方式による分類

 15-には、接着剤の形態、固化(硬化)の方式による分類を示しました。

図15-2 接着剤の形態、固化(硬化)の方式による分類

 形態としては、液状と固形に大別されます。

 液状のものには、低粘度のものから高粘度やほとんど流れないペースト状のものまで、さまざまな粘度のものが有ります。また、無溶剤形のもの、成分を溶剤や水などに溶解した溶液形のもの、牛乳のように成分が水などに分散された乳液形のものがあります。樹脂の乳液はエマルジョン、ゴム(エラストマー)の乳液はラテックスと呼ばれています。

 固形のものには、フィルムやテープ状、ペレットや棒状、ブロック状などがあります。

 部品組立で多用されている無溶剤液状のものには、一液のもの、二液のもの、一液とアクセラレーターやプライマーと呼ばれる低粘度の溶液を併用するものがあります。これらの反応固化(硬化)の方式はさまざまで、加熱だけで固まるもの、二液を計量・混合して反応させるもの、空気中や被着材表面の吸着水と反応して固まるもの、二液や主剤とアクセラレーターが接触すると硬化するもの、光で固まるもの、酸素の遮断と活性金属への接触で固まるものなどがあります。反応硬化するときに副生成物を発生するものもあります。また、二つ以上の反応方式が併用されたものも有ります。溶液や乳液状のものは、溶剤や水が乾燥すると固化します。

 粘着材以外の固形のものは、熱を加えて一旦液状にしなければなりません。エポキシ系のものは加熱状態で反応硬化します。熱可塑性樹脂のホットメルト系では、加熱液状で塗布・貼り合わせた後に、冷却すると固形に戻ります。ホットメルトと水分硬化を併用した反応型ウレタン系ホットメルト接着剤もあります。

 これらの固化(硬化)の方式の違いは、接着剤を用いるプロセスに大きく影響します。反応の方式によって反応硬化に影響する因子は大きく異なり、この点を見落とすと不良に繋がるので、良く理解しておいてください。詳しいことは、それぞれの接着剤の種類のところで説明します。

(3)特性・機能による分類

 15-3には、接着剤の特性・機能による分類を示しました。

図15-3 接着剤の特性・機能による分類

 接着剤に要求される特性・機能は、非常に多岐にわたっています。大別すると、性能に関する要求、作業性に関する要求があり、近年では環境対応性の要求も強くなっています。

 性能に関する要求としては、強度的特性、熱的特性、電気的特性、光学的特性などが代表的で、接着作業性に関しては、表面処理の簡素化や難接着材料に簡易な表面処理で使える接着剤、計量・混合が簡易に行える接着剤、短時間で硬化できる接着剤、一旦硬化した接着部を簡単に剥がして再接着できるリペアラブル接着剤や部品加工のために部品を仮固定しておく接着剤などがあります。この再剥離の技術は、環境対応におけるリサイクルのための易解体性接着剤の開発にもつながるものです。

 

 次回からは、代表的な接着剤の特徴と使用上の注意点について説明します。

 

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