≪接着・原賀塾≫

講師:(株)原賀接着技術コンサルタント

首席コンサルタント、工学博士

原賀康介

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pdfファイル版(第1回~第56回)販売のお知らせ

・<接着・原賀塾>の 第1回から第56回(第1章~第14章) を読みやすくまとめた「pdfファイル版」(A4カラー版 全304ページ、図表322点)です。
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15.接着剤の種類、特徴と使用上の注意点

15.3 接着剤の固化(硬化)の方式と注意点

 

(5)接着面に付着している水分との反応

 一液型の瞬間接着剤(正式名称はシアノアクリレート系接着剤)が、塗布して貼り合せただけで短時間で硬化するのは、15-9に示すように、瞬間接着剤の主成分であるシアノアクリレートモノマーが、部品の表面に付着しているわずかな水分と接触すると、急速に連鎖反応で硬化するためです。このような反応は<アニオン重合>と呼ばれています。

 

図15-9 接着面に付着している水分との反応による硬化(アニオン重合)(瞬間接着剤)

 

 部品の表面に付着している水分の量は、天候や季節、接着する部品の材質、表面状態などによって異なるため、硬化時間は変化します。また、表面に付着している水分量は僅かなので、厚い接着層では硬化しにくくなります。瞬間接着剤では極力薄い接着層で使用するのはこのためです。

(6)酸素の遮断と活性金属への接触による硬化

 ねじの緩み止め用に多用されてきたアクリル系の嫌気性接着剤は、最近では性能が向上しさまざまな部品組立にも使用されています。一液型の嫌気性接着剤は、酸素の遮断と活性材料への接触の二つの条件が満たされることによって、ラジカルが発生して連鎖反応で硬化するものです。活性材料や不活性材料としては、次のようなものが有ります。

 【活性材料】

   鋼、銅、黄銅、リン青銅、アルミ合金、チタン、ステンレス、ニッケル、

   マンガン、コバルト、(亜鉛)、(銀)など

 【不活性材料】

   純アルミ、マグネシウム、金、(亜鉛)、(銀)、

   アルマイト処理、クロムめっき、クロメート処理、リン酸塩被膜、

   ゴム、ガラス、セラミック、プラスチック、

   多孔質材料、など

 

 不活性材料では硬化しないため、15-10に示すように、あらかじめ不活性材料の接着面に<アクチベーター>と呼ばれる活性材料の溶液を塗布・乾燥させた後に嫌気性接着剤を塗布して貼り合せれば接着することができます。 

 

図15-10 酸素の遮断と活性金属への接触による硬化(嫌気性接着剤)

 

 嫌気性接着剤は活性材料との接触面からラジカル連鎖反応で硬化するため、接着層の厚さが厚くなると硬化しにくくなります。極力薄い接着層で使用しなければなりません。

 嫌気性接着剤は、はみ出し部など空気に触れている部分は硬化しないので、嫌気性と紫外線硬化や湿気硬化、熱硬化などを併用したタイプが多く市販されています。

(7)光照射による硬化

 紫外線や可視光線で硬化する一液型の光硬化型接着剤では、15-11に示すように、光反応開始剤というものが主剤の中に添加してあって、紫外線や可視光などの光を照射することによって反応開始剤が分解して硬化触媒となり主剤を硬化させます。主剤は、アクリル系エンチオール系エポキシ系シリコーン系などのものが有ります。

図15-11 光照射による硬化

 

 光硬化型接着剤は、光が当たっている面から硬化が進行していくので、ポッティングなど層が厚い場合は、硬化反応は均一な速度で進まず、厚さによって硬化状態にタイムラグが生じます。また、光が当たらない部分は硬化しないため、熱硬化や嫌気硬化を併用したものも多く販売されています。

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(8)溶媒の乾燥による固化

 接着剤には、樹脂やゴム成分を溶剤や水に溶かした溶液型接着剤や水に分散させたエマルジョン型ラテックス型などの接着剤も多く有ります。このような接着剤は、接着剤を塗布して貼り合せた後に、溶剤や水が揮散することによって樹脂やゴム成分の分子鎖が絡み合って固化するものです。成分の樹脂やゴムは反応は起こしません。

 このため、溶剤や水分を吸収したり通さない被着材では溶媒の乾燥にきわめて長時間を要するために、使用はお勧めできません。

(9)接着面の溶融と相互拡散による接着

 プラスチック同士の接着には、溶剤型の接着剤が多く使用されます。この接着剤は、溶剤に溶けるプラスチックの表面に塗布して貼り合わせたり、接着面を合わせた状態で接着部に液を浸透させて用います。15-12に示すように、接着剤の溶剤によって被着材の表面を溶融させて、加圧によって溶融した被着材の分子鎖同士が相互に拡散して絡み合い、溶剤が揮散すると固化するものです。このような接着剤は、ドープセメントと呼ばれていて、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解してあるものです。溶剤だけでも溶融接着はできますが、樹脂が溶解してあるのは、表面の凹凸を埋めて肉痩せを減らしたり、粘度を調整するためです。

 ドープセメントによる接着では、接着剤を塗布して貼り合わせ後、溶剤が乾燥するまでプラスチック同士を十分に密着させておくことが必要です。また、接着剤中の溶剤で溶融しないプラスチックには使用できません。

図15-12 溶剤系接着剤による溶融接着

10)溶媒の乾燥と自着による接着

 万能接着剤的に広く使われている溶媒型のクロロプレンゴム系接着剤は、接着する両面にそれぞれ接着剤を塗布して、溶媒を乾燥させた後に、両面を貼り合わせて加圧して接着させます。このような接着剤をコンタクトセメントといいます。この接着プロセスは、15-13に示すように、まず、接着剤を両方の被着材に塗布して、それぞれ、クロロプレンゴムと被着材を分子間力で結合させます。その後、溶媒を乾燥させることで、クロロプレンゴムの膜を作ります。最後に、両面を貼り合わせてクロロプレンゴムの膜同士を接触させ、加圧することで、相互に分子を拡散させて接着するものです。このような分子の相互拡散による接着は、<自着>と呼ばれています。

 一度に厚く塗ると、表面の溶媒が揮散して、表面が革張り状態となって、残った溶媒が揮散しにくくなるので、厚い層が必要な場合は、薄塗りと乾燥を繰り返す必要があります。

 

図15-13 溶媒型ゴム系接着剤による分子間力と相互拡散による接着

11)冷却による固化(温度による相変化)

 ホットメルト接着剤は、ペレット状、棒状、シート状、ウェブ状などの固形の接着剤で、熱で溶かして液体にした状態で部品に塗布して、冷えればまた固体に戻る接着剤で、ほとんどのものは反応硬化はしません。ホットメルト接着剤を接着面にあらかしめ塗布・冷却してコーティングした状態で保管しておき、接着時に貼り合わせて熱を加えて再溶融させて接着することもできます。良好な接着を行うためには、低粘度にするための十分な温度と、貼り合わせ時の十分な圧力と加圧時間が重要です。

 ウレタン系の反応型ホットメルト接着剤というものは、一般のホットメルト接着剤と同様に固体を熱溶融して接着しますが、接着後、「(4)一液で空気中の水分との反応による硬化」で述べた空気中の水分と徐々に反応して硬化していくものです。熱で溶融させる前の固体の状態でも水分と反応するため、使用するまで水分を遮断する包装をしておかなければなりません。

 

12)固化しないもの(粘性による付着)

 粘着テープや両面接着テープの粘着剤は、接着前も接着後も同じ状態のままで固化はしません。粘着剤は、貼り合せるときには液体として作用し、貼り合せ後は固体として作用するように調整された粘弾性体です。

 

 

 次回からは、代表的な接着剤の特徴、使用上の注意点について述べていきます。

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