≪接着・原賀塾≫

講師:(株)原賀接着技術コンサルタント

首席コンサルタント、工学博士

原賀康介

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pdfファイル版(第1回~第56回)販売のお知らせ

・<接着・原賀塾>の 第1回から第56回(第1章~第14章) を読みやすくまとめた「pdfファイル版」(A4カラー版 全304ページ、図表322点)です。
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15.接着剤の種類、特徴と使用上の注意点

15.4 代表的な接着剤の特徴、使用上の注意点

(1)構造用接着剤、準構造用接着剤

 (1-2) 変性アクリル系接着剤(SGA

 1970年代後半に開発された接着剤で、二液型アクリル系、構造用アクリル系、変性アクリル系、第2世代アクリル系、SGASecond Generation Acryic Adhesive)などいろいろな呼び方があります。

 作業性、接着強度、耐久性等に優れているため、日本ではスピーカーの界磁部の磁石とヨークの接着でエポキシ系接着剤に代わって急速に拡がり、その後、エレベーターのパネル補強材の接着に適用され全世界に拡がりました。その後、私が現役時代に開発に携わったモーターの磁石接着、制御盤筐体の組み立て、電波望遠鏡の高精度反射パネルの組み立て、高速列車用の空調装置の枠体組み立て、駅ホームの安全扉の組立など多くの製品にも変性アクリル系接着剤(SGA)が適用されてきました。

 この接着剤は、<第58回>の「15.3 接着剤の固化(硬化)の方式と注意点」の「(3)二液の接触による連鎖反応での硬化」で述べたように、<ラジカル重合>で室温で短時間に硬化します。

 形態としては、二液主剤型二液の一方の触媒を溶液としてプライマーにしたプライマー・主剤型一液加熱硬化型などがあります。

 

① 変性アクリル系接着剤(SGA)の特徴

 この接着剤は、他の接着剤にはない次のような多くの特徴が有ります。

 ・15-16に示すように、室温硬化であるにもかかわらず、多くの種類の油に対して優れた油面接着性を有しており、油面でも写真のように優れた凝集破壊が得られます。液状やスプレータイプのシリコーン離型剤などが付着した面でも接着して凝集破壊します。 

図15-16 各種の油を塗布した面での変性アクリル系接着剤(SGA)の

引張りせん断接着強度と破壊状態

(低臭気タイプ ハードロックNS700M-20:デンカ(株)製)

 

 ・<第58回>15-615-7に示したように、二液型でも、配合比は目分量程度で良く、ラフな混合でも十分に硬化します。二液を混合しないで、重ねて塗布したり、両面に別々に塗布して貼り合わせることでも硬化します。

 

 ・スタティックミキサーを用いる場合、ミキサーのコマ数(エレメント数)は、12コマ程度で十分です。エポキシやウレタンの場合は、24コマ以上が必要です。

 (参考)スタティックミキサーの洗浄法

   接着剤がスタティックミキサー内に残留すると、ゲル化・硬化が進むため、粘度が上昇して適正な混合や吐出ができなくなります。吐出状態が悪くなったら、次のような方法で洗浄します。

   1)ミキサーを取り外す。

   2)圧縮空気でミキサー内の残留接着剤を押し出す。

   3)ほぼ押し出せたら、空気の圧や流量を低くして、ノズル内に空気を流し続けます。変性アクリル系接着剤(SGA)は、空気に触れていると硬化しにくい性質もあるので、管壁やエレメント壁に付着したわずかな接着剤の硬化を防げます。ミキサーをカートリッジに取り付ければ、すぐに使用を開始できます。塗布か終了すると、タイマーが作動して、自動で上記の動作を行う塗布装置もあります。

   4)ミキサーを保管する場合は、アセトンやMEKなどが入ったポリ容器中にミキサーを浸漬し、取り出して圧縮空気で溶剤を乾燥させます。

 

 ・室温で短時間に硬化します。10℃以下の低温でも硬化します。

 ・15-17に示すように、ラジカル反応のため、硬化速度にかかわらず可使時間と固着時間の差が小さく、可使時間が長いタイプでも、エポキシやウレタンなどの<付加重合(共重合)>にくらべて、短時間で硬化します。

    【可使時間に対する固着時間の比】

       二液エポキシ、二液ウレタン(共重合):1216

       SGA(ラジカル反応)          : 34 

図15-17 変性アクリル系接着剤(SGA)の可使時間と固着時間の関係

(ハードロックC-355シリーズ、デンカ(株)製)

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  ・15-18に示すように、硬化後は、軟らかいゴム層の海に硬いアクリルの島が分散した<海島構造(ポリマーアロイ)>を形成するため、せん断強度、引張強度だけでなく、はく離強度や衝撃強度にも優れています。凝集破壊性も良好です。ゴルフクラブのシャフトとヘッドの接合にも使われています。

図15-18 変性アクリル系接着剤(SGA)硬化物の海島構造の一例

(デンカ(株)製ハードロック)

 

 ・<海島構造>や油面接着性でもわかるように、被着材との密着性が高いため、凝集破壊しやすく、15-19Aに示すように、接着強度の再現性が非常に高く、変動係数Cv(標準偏差/平均値)は、0.033と非常に小さい値を示しています。また、Bに示すように、接着剤の製造ロットによる接着強度のばらつきも非常に小さいです。

図15-19 変性アクリル系接着剤(SGA)の接着強度のばらつき

 

 ・ゴム層が応力緩和しやすいため、大面積の接着でも、応力集中は生じにくいです。

 

 ・通常は接着できないポリエチレンやポリプロピレンを接着できるものもあります。

 

 ・15-20に示すように、焼き付け塗装耐熱性にも優れています。220℃で60分間加熱しても、凝集破壊しており、せん断強度もはく離強度も低下はありません。15-21は、鋼板製のパネルとハット形補強材を接着して、220℃で焼き付け塗装を行った後、バールによる破壊試験を行った例ですが、接着部は剥がれずに補強材が変形しています。 

図15-20 変性アクリル系接着剤(SGA)の焼付け塗装耐熱性試験結果

(各温度に60分間暴露)(図中の記号Cは凝集破壊の意味)(デンカ(株)製ハードロック)

 

図15-21 焼付け塗装後のバールによるハット形補強材の引きはがし試験

 

② 変性アクリル系接着剤(SGA)の使用上の注意点

 ・容器で二液を混合すると急激な発熱を起こして短時間で硬化するため、容器での計量・混合は行わないでください。

 ・混合から塗布・貼り合わせ・固定までの時間が長くなると、急激に反応硬化が進むため、15-22に示すように、接着強度は急激に低下します。混合開始から貼り合わせ・圧締までの作業を可使時間内に終了させることが必須です。なお、<可使時間>の定義はメーカーによって異なりますが、私は、接着強度が2割低下するまでの時間を基準として用いています。

  ※SGAの不良の多くは、可使時間オーバーでの貼り合わせによるものです。

 

15-22 接着剤の混合開始から貼り合わせ・固定までの時間による接着強度の変化の例

 

 ・シリコーン離型剤が付着した面でも接着するので、治具の離型にはフィルムなどの固体を用いる必要があります。

 ・MMA(メチルメタアクリレート)を主成分としたタイプは臭気が強く、危険物第4類第1~第2石油類に該当します。(非MMAタイプは臭気が少なく、第3類石油類に該当します)

 ・MMAタイプは、非MMAタイプに比べて硬化収縮率が大きい。

 ・プライマー・主剤型は、はみ出し部が硬化しにくい。

 ・重ね塗りや別塗布などの非混合塗布の場合は、接着層が厚くなると硬化しにくい。

 ・重ね塗りや別塗布などの非混合塗布の場合は、A剤とB剤の塗布位置がずれると、周辺部が未硬化になりやすい。

 

 

次回は、ちょっと寄り道をして、変性アクリル系接着剤(SGA)による<物性傾斜接着>について述べます。

 

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