≪接着・原賀塾≫
講師:(株)原賀接着技術コンサルタント
首席コンサルタント、工学博士
原賀康介
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pdfファイル版(第1回~第56回)販売のお知らせ
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<第57回>の図15-2「接着剤の形態、固化(硬化)の方式による分類」に示したように、接着剤が硬化や固化する方式にはいろいろなものがあり、接着剤の種類によって異なっています。固化(硬化)の方式によって、接着のプロセスに影響する諸因子は大きく異なるので、これを知っておくことは重要です。
以下に、固化(硬化)の方式と注意点などについて説明します。
図15-4に示すように、主剤と硬化剤を決められた割合で計量し、十分に混合することで、主剤と硬化剤の分子同士を隣接させて反応させるものです。反応が進むと鎖状の分子が架橋構造(三次元網目構造)を形成します。このような反応は<付加重合(共重合)>と呼ばれています。このような方式で硬化する接着剤としては、二液型エポキシ系接着剤、二液型ウレタン系接着剤、二液型シリコーン系接着剤などがあります。使用する際には、正確に計量し、十分に混合することが必要です。
図15-4 二液の混合による硬化
エポキシ系接着剤の主剤のエポキシ樹脂は、1分子の両末端または側鎖に2個以上のエポキシ基を持つ化合物で、汎用的なビスフェノールA型の他にノボラック型や脂環式などがあります。硬化剤には、アミン系、酸無水物系、アニオン重合系、カチオン重合系、フェノール系、チオール系等多くの種類があり、硬化反応は、主剤と硬化剤の種類によって室温または加熱下で起こりますが、いずれも温度が高いほど短時間で硬化します。なお、室温で硬化する場合は、時間が経っても100%の反応率までは達しないため、完全硬化させるためには、室温で硬化後加熱が必要です。
付加重合で硬化する二液型シリコーンは、接触している物質によっては、硬化が阻害される場合があります。事前に硬化するかどうかを確認しておくことが重要です。
【硬化阻害物質の例】
・硫黄化合物、燐化合物、窒素化合物
・有機ゴム(天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、EPDMなど)
・軟質塩ビの可塑剤・熱安定剤
・アミン硬化系エポキシ樹脂、縮合タイプのシリコーン樹脂、ウレタン樹脂のイソシアネート類
・一部のビニルテープ粘着剤・接着剤・塗料(ポリエステル系塗料など)
・ワックス類、半田フラックス、松ヤニ、ゴム粘土・油粘土、など
一液型のエポキシ系接着剤や一液型のシリコーン系接着剤などは、加熱することによって、<付加重合(共重合)>反応で硬化します。種類は少ないですが、一液加熱硬化型のアクリル系接着剤もあります。
これらの接着剤では、加熱するまでは反応しない硬化剤(潜在性硬化剤)がすでに主剤の中に添加されています。このため、保存安定性が良くないので、冷蔵や冷凍保管が必要になります。潜在性硬化剤は、決められた温度以下では反応性が無いため、一液加熱硬化型接着剤を用いる場合は、決められた温度以上に加熱して硬化しなければなりません。
一液付加反応型シリコーン系接着剤は、二液付加反応型シリコーン系接着剤と同様に硬化阻害物質には注意が必要です。
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二液主剤型の変性アクリル系接着剤(SGA:第二世代アクリル系接着剤)は、図15-5に示すように、二液とも主成分はほとんど同じで、片方の液には酸化触媒が、もう一方の液には還元触媒が僅かな量添加されていて、それらの触媒が接触することによってラジカルというものが発生し、接着剤の主成分が連鎖反応によって硬化します。このような反応方式は<ラジカル重合>と呼ばれています。
図15-5 二液の接触による連鎖反応での硬化
ですから、図15-6(A)に示すように、二液を混合すればもちろん硬化しますが、二液を混合しないで、(B)のように、A剤の上にB剤を塗布したり、(C)のように、両面にA剤とB剤を別々に塗布したりして貼り合せて二液を接触させることでも硬化することができます。(D)に示すように、スプレーの霧中で混合することもできます。
図15-6 二液主剤型変性アクリル系接着剤(SGA)の種々の塗布方法
また、すでに述べたように二液とも主成分はほとんど同じで、酸化触媒と還元触媒が接触すればラジカルが発生するので、図15-7に示すように、二液の配合比が相当変化してもきちんと硬化でき、高強度を維持することができます。A剤を赤色に、B剤を緑色に着色してあれば、混合後の色の変化で配合比がほぼわかるので、目分量でも容易に作業ができます。
図15-7 二液の配合比と接着強度の関係(変性アクリル系接着剤とエポキシ系接着剤との比較)
二液の一方の触媒を溶液としてプライマーにした主剤・プライマー型の変性アクリル系接着剤(SGA)もあります。これは一方の接着面にプライマーを薄く塗布しておいて、もう一方の接着面に主剤を塗布して貼り合せるとラジカルが発生して硬化するものです。
一液加熱硬化型もあります。
ラジカル連鎖反応は、反応を停止させようとする禁止反応も伴うため、酸化剤と還元剤が接触してラジカルが発生した部分からせいぜい数mm程度しか硬化しないので、主剤・プライマー型や二液を別々に塗布したり重ねて塗布して使用する場合は、接着層の厚さが厚くなると未硬化になる場合があります。
シーリング材としても多用されている一液室温硬化型のシリコーンRTV、弾性接着剤とも呼ばれている一液室温硬化型の変成シリコーン系接着剤、一液室温硬化型ウレタン系接着剤などは、空気中の水分と反応して硬化します。
これらの接着剤は、図15-8に示すように、水分と反応して硬化する過程で副生成物が生成して接着剤の外に放出されます。反応の過程で副生成物が生成する反応は<縮合重合反応>と呼ばれています。
図15-8 空気中の水分との反応による硬化(縮合重合反応)
一液室温硬化型のシリコーンRTVは、酢酸、アセトン、オキシム、アルコールなどが生成し、それぞれ、酢酸タイプ、アセトンタイプ、オキシムタイプ、アルコールタイプと区別されて販売されています。一液室温硬化型変成シリコーン系接着剤(弾性接着剤)ではアルコールが出るものがほとんどです。一液室温硬化型ウレタン系接着剤では、二酸化炭素が発生します。
酢酸は腐食性が有り、アセトンやオキシムは溶剤なので、部品の材料によっては腐食したり侵されることがあります。オキシムは銅化合物と錯体を作るので、変色や腐食に注意が必要です。
空気中の水分で硬化する接着剤は、接着剤のはみ出し部など空気に触れている部分は硬化しやすいですが、水分を通しにくい被着材の間に挟まれた接着部では、水分が接着部の内部まで届くのに時間がかかるので硬化には時間がかかります。そのため、水分を通さない部品の大面積での接着には不適です。また、空気中の水分量は天候や季節によって変化するので、高湿度時は速く硬化しますが、低湿度時は硬化に非常に時間がかかります。低湿度時には加湿などで湿度管理をする必要があります。また、水分で急速に硬化させた場合は、反応で発生した縮合物が接着部の内部で気泡となることもあるので注意が必要です。
次回も引き続き、接着剤の固化(硬化)の方式と注意点について述べます。
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