≪接着・原賀塾≫
講師:(株)原賀接着技術コンサルタント
首席コンサルタント、工学博士
原賀康介
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pdfファイル版(第1回~第56回)販売のお知らせ
・<接着・原賀塾>の 第1回から第56回(第1章~第14章) を読みやすくまとめた「pdfファイル版」(A4カラー版 全304ページ、図表322点)です。
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15.接着剤の種類、特徴と使用上の注意点
ここまで、接着剤の種類、反応機構、代表的な接着剤の特徴などについて述べましたが、ここからは、接着剤の選び方について述べます。
「最適な材料(ここでは接着剤)を選ぶ」ということは、製品の機能・特性はもちろん、製造プロセス、信頼性・品質、コストも左右する重要な作業です。国際的な接着品質に関する規格(ISO21368など)の最上級の資格では、「接着剤を選定できる能力を有していること」が条件の一つとなっています。無数にある接着剤の中から、一つを選び出すという作業は非常に難しい作業で、理屈だけでは困難で、かなりの経験も必要です。失敗を繰り返しながら経験を積んでいかなければなりません。
接着剤メーカーの技術営業の方々は、候補品を推薦してくれますが、それは、「自社製品の範囲に限られる」ためにできることで、世界中にある無数の接着剤が対象となると、彼らも戸惑うことになるでしょう。
様々な場面で、「この接着剤はどういう根拠で選びましたか?」という質問がされることがあります。これに対して、「AIに聞きました」、「メーカーから推薦されました」という回答ではなかなか納得は得られないでしょう。専門分野が接着以外の技術者ならまだしも、材料技術者、特に、接着に係わる技術者の場合は、きちんと選定理由を説明できなければなりません。
一方、最近のAIの進歩はめまぐるしく、AIがかなり適格な接着剤を提案してくれる状態に至っています。今後のAIの進歩とともに、選定の精度が上がっていくことを考えると、AIを活用しない手はありません。重要なことは、AIで得られた情報を鵜呑みにすることなく、自分なりに、そこに至る考え方をきちんと整理して検証していくことです。
なお、AIを使う際には、情報漏洩のリスクも考慮しておいて下さい。
以下に、接着剤選定法について述べます。
この方法は、図15-34(文献1)に示すように、接着しようとする被着材料の種類の組合せから、接着しやすい接着剤の種類を、主成分を主体に選定する方法です。
この方法は、簡便に使えますが、要求される機能・特性は考慮されません。また、被着材料の種類が同じでも、要求機能に合わせて種々のグレードが有り、接着性も大きく異なる場合があったり、表面にめっきや塗装、コーティングなどがなされていたり、内部離型剤や可塑剤が表面に移行していたり、洗浄の方法によっても接着性は大きく異なります。
このため、直交表からの選定は、きわめて大まかな目安程度と考えた方がよいでしょう。最近では、ほとんどの被着材は、表面改質で接着しやすくできることを考えると、直交表の役割はそろそろ終わりと言ってもよいかもしれません。
図15-34 被着材料の組合せから接着剤を選ぶ選定直交表
文献1)日本接着学会編「プロをめざす人のための接着技術読本」日刊工業新聞社刊,P.26,(2009).
接着剤と被着材料の<SP値>が近いほど、相溶性が良く、接着しやすいと言われています。表15-2(文献2)に示すように、代表的なプラスチックや溶剤のSP値はすでに測定されているので、溶剤に溶けるプラスチック同士を溶剤で溶かして接着するような場合には有効な方法です。しかし、溶剤にも溶けず、接着剤とも相溶しない金属やガラスの接着などに当てはめるのは困難です。
もし、SP値がさほど重要な指標であるなら、各種の被着材のSP値や接着剤のSP値は、カタログに当然記載されているべきですが、ほとんど示されていません。では、SP値を実測すれば良いのでしょうが、測定は簡単ではありません。
ということは、理論的に正しくても、実用的意味は少なく、実際の接着剤選定の基準としては適当とは言いがたいでしょう。
表15-1 代表的な溶剤とポリマーのSP値
文献2)三刀基郷:“接着の基礎と理論”,日刊工業新聞社(2012),P.80
耐熱性、耐薬品性、耐油性など種々の要求特性に強い成分の接着剤を、星取り表から選ぶ方法です。
しかし、接着剤は各種の樹脂やゴムなどの配合物であり、単独の樹脂やゴムとはかなり異なる性質を持つものが多いため、成分の詳細がわからない接着剤ユーザーには、この方法はあまり役に立ちません。
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【セミナー目次】
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第1章 ⾼信頼性・⾼品質接着の作り込みの必須条件と開発段階で達成すべき目標値
第2章 接着のメカニズムと目標値達成のための方法
第3章 接着の機能・特性を損なう「内部応力」の発生メカニズムと影響諸因子、低減法
第4章 接着剤の種類と特徴、使⽤上の注意点
第5章 設計、施⼯、管理のポイ
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第1章 接着耐久性 劣化のメカニズムと長期経時変化の推定法
第2章 接着の特性・信頼性の向上とコストダウンを両立させる『複合接着接合法』
第3章 設計許容強度と接着部の必要強度、必要Cv値を簡易に見積もる『Cv接着設計法』
第4章 最適設計のための耐用年数経過後の安全率の裕度の定量化法
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接着剤を用いて部品や機器の組み立てを行う<接着ユーザー>が、接着剤に求めていることは、材質Aと材質Bに「良く接着する」ことではなく、部品や機器に要求される機能・特性を満足することなのです。被着材料表面の接着性は、表面改質で対応可能です。
接着剤は、次のような部品・機器の機能・性能面からの要求項目を考慮して選定する必要があります。
・部品の構造、接着部の構造
・部品の寸法
・部品の精度(ひずみ・変形、位置ずれ、など)
・部品の材質、弾性率、線膨張係数、熱的特性、など
・接着面の状態(粗さ、コーティングの有無、種類、など)
・接着部の機械的特性(力の加わり方、必要強度、など)
・接着部の熱的特性(使用温度範囲、ガラス転移温度(Tg)、熱伝導性、線膨張係数、など)
・接着部の電気的特性(導電性・絶縁性、誘電率、など)
・接着部の磁気的特性、光学的特性、など
・接着部の化学的特性(耐水・耐湿性、耐油性、耐薬品性、など)
・使用環境の特異性(真空中での使用、など)
・アウトガスの影響
・耐用年数
・信頼度
また、次のような接着作業面での条件も考慮して選定する必要があります。
・はみ出しの可否、縦面塗布での垂れの可否
・塗布方法、塗布量、塗布厚さ(ノズル塗布、転写塗布、印刷塗布、など)
・接着方式(面同士の接着、隅肉接着、浸透接着、など)
・硬化方法、時間
・接着後の後工程(機械加工、焼き付け塗装、めっき、など)
その他に、
・安全性、法規制
・管理の難易度
・入手性
・容器の形態、容量
・価格
なども重要です。
次回は、接着剤の選定手順について述べます。
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