≪接着・原賀塾≫
講師:(株)原賀接着技術コンサルタント
首席コンサルタント、工学博士
原賀康介
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pdfファイル版(第1回~第56回)販売のお知らせ
・<接着・原賀塾>の 第1回から第56回(第1章~第14章) を読みやすくまとめた「pdfファイル版」(A4カラー版 全304ページ、図表322点)です。
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ここまで、接着剤の分類、接着剤の固化(硬化)の方式と注意点について説明してきましたが、次は、部品や機器の組み立てに多用されている代表的な接着剤について種類別に性能や使用上の注意点などを説明します。接着の不良は、接着剤の欠点に伴って生じることが多いので、特徴に関しては、長所だけで無く、欠点についても十分に知っておくことが必要です。
構造用接着剤とは、JIS K 6800の「接着剤・接着用語」では「長期間大きな荷重に耐える信頼できる接着剤」と定義されていますが、厳密には、<第48回>の「14.接着強度や性能に影響する諸因子 14.4 接着強度の基準」の「表14-1 接着の強度基準の例」で示した米国連邦規格MMM-A-132B (1994/4)「接着剤、耐熱性、航空機構造用、金属/金属」の規格を満足する航空機のハニカムパネル接着などに使用されるような接着剤と考えれば良いでしょう。準構造用接着剤は、上記の性能に近いもので、自動車、車輌、土木・建築、各種の構造物組み立てに使用される接着剤と考えれば良いでしょう。
代表的な構造用・準構造用接着剤としては、エポキシ系接着剤、変性アクリル系接着剤(SGA)、二液型ウレタン系接着剤があります。耐熱性が要求されるブレーキシューの接着などでは、フェノール系接着剤も使われています。ここでは、エポキシ系接着剤、変性アクリル系接着剤(SGA)、ウレタン系接着剤について説明します。
エポキシ系接着剤は、1930年から40年代に開発され、スイスのチバ・ガイギー社から “アラルダイト” の名称で商品化され、改良を重ねて多くの産業分野で使用され、航空機などの構造接着にも使用されるようになりました。
被着材との結合は、エポキシ樹脂の分子の中間部にある水酸基(-OH)やメチル基(-CH3)によるものと考えられます。
<第58回>の「15.3接着剤の固化(硬化)の方式と注意点」の「(1)二液の混合による硬化」、「(2)一液の加熱による硬化」で述べたように、エポキシ樹脂は、主剤であるエポキシ樹脂と各種の硬化剤との反応で三次元の架橋構造を作りますが、エポキシ樹脂および硬化剤には多くの種類があるので、硬化物の物性(例えば、弾性率、ガラス転移温度Tgなど)は非常に広範囲に渡ります。
硬化したエポキシ樹脂自体は、機械的特性や電気的特性、耐薬品性などに優れていますが、一般に固くてもろいため、構造強度・低温特性・高温特性、強靱性などを付与するために、各種の樹脂やゴム、添加剤、充填剤などで変性されています。航空機のハニカムパネル接着などに用いられるフィルム状エポキシ系接着剤には、低温特性を向上させたナイロン変成エポキシ系接着剤、耐熱性を向上させたフェノール変成エポキシ系接着剤、強靱性を付与したニトリル変成エポキシ系接着剤などがあります。
種類としては、二液型、一液型、フィルム状、粉末状などがあります。液状のものは、低粘度のものから高粘度、ペースト状まで粘度は広範囲のものがあります。一液型には、接着剤メーカーで二液を計量・混合・脱泡してシリンジに充填して、冷凍で保管する<プレミックスフローズン型>もあります。
自動車の車体組立などに使用されるエポキシ系接着剤は、一液加熱硬化型が基本で、油が付着した面でも脱脂なしで接着できる<油面接着性>を有しています。
構造用・準構造用ではありませんが、電子部品関係では、エポキシ樹脂中に多量の銀や銅などの金属粉末を添加して導電性を付与した<導電性接着剤>も用いられています。あくまでも、樹脂が電気を通すのではなく、金属フィラーが接触して電気を通すものです。
一般構造用・準構造用としては、二液型エポキシ系接着剤と一液型エポキシ系接着剤が用いられます。
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■主 催:日本テクノセンター https://www.j-techno.co.jp/
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エポキシ系接着剤は以下のような注意点があります。
・硬化後硬いものははく離、衝撃に弱い。カタログを見るときは、せん断強度だけでなくはく離強度もチェックすること。
・接着剤中に水分や空気などの気体が混ざっていると、加熱硬化時に発泡の原因となる。
・決められた配合比を守ること。硬化剤の量は、基準値±5%以内で計量すること。
・混合は主剤と硬化剤の分子が隣接するまで十分に行うこと。
・混合時の巻き込み空気を脱泡するときは、接着剤中の低沸点成分が飛ばないよう注意すること。
・混合開始から貼り合わせ、加圧終了までの作業は、使用可能時間(<ポットライフ>や<可使時間>と呼びます)内に終了すること。作業時の温度が高い場合や混合量が多いと反応熱によって使用可能時間が短くなる。
・10℃以下の低温では、硬化しにくい。加温が必要。
・室温で硬化するものでも、室温では100%の反応はしない。完全硬化させるためには、室温で硬化後、加熱を行うこと。
・基本的に油面接着性はないため、接着面の十分な脱脂・清浄が必要。
・硬化剤によっては、皮膚かぶれを起こすことがある。ゴム手袋やプラスチック手袋を着用し、オーブン加熱の場合は、排気後オーブンの扉を開くこと。
・油面接着性の有るものと無いものがある。選定時に考慮すること。
・油面接着性がないものでは、接着面の十分な脱脂・清浄が必要。
・接着剤中にすでに硬化剤が添加してあるため冷蔵・冷凍での保存が必要。保管期限も守ること。
・図15-14に示すように、冷蔵・冷凍庫から取り出し後は、容器全体が室温に戻るまで、開封してはならない。接着剤が冷えている状態で蓋を開けると、接着剤表面で結露して、接着剤に水分が混入する。使用後、再度冷蔵・冷凍保管を行う際には、容器内の空間をできるだけ少なくすること。空間体積が大きくなると、容器壁に結露しやすくなり、接着剤に水が混入する。水分が混入した接着剤を100℃以上に加熱すると水蒸気となり、発泡や界面はく離の原因となる。
できるだけ、チューブ部入りやカートリッジ入りなど、容器中に空気が残らない容器に入った接着剤を用いるのが良い。
図15-14 接着剤の冷蔵庫や冷凍庫からの取出し、再保管の注意点
・必ず、定められた温度以上で、定められた時間以上加熱すること。部品の表面の温度ではなく、ダミー等で接着部の温度測定を行って、オーブンの温度設定、硬化時間の設定・管理を行うこと。
・一液型エポキシ系接着剤の硬化温度は、120℃以上のものが多いが、できるだけ低温で硬化したい場合は、80℃や60℃で硬化するものも有る。
・粉末硬化剤を用いた一液型で「浸透接着」を行う場合は、図15-15に示すように、昇温中に液状の主剤は粘度が低下して先に接着部に浸透するが、硬化剤は一定温度以上になるまで溶融しないため、接着部に浸透できずに硬化不良となる。一液型での「浸透接着」には、硬化剤も液状の接着剤を用いること。
図15-15 粉末状硬化剤を用いた一液加熱硬化型エポキシ系接着剤による浸透接着での不良例
・加熱硬化後室温までの冷却段階で、接着剤と被着材の線膨張係数差によって、大きな熱収縮応力が発生する。硬化後の弾性率ができるだけ低い接着剤を用いるか、急冷を避けて徐冷を行い、応力緩和を促すこと。
・硬化剤によっては、皮膚かぶれを起こすことがある。ゴム手袋やプラスチック手袋を着用し、オーブン加熱の場合は、排気後オーブンの扉を開くこと。
・室温硬化型のプレミックス型を用いる場合は、使用後のシリンジは、接着剤が残っていても廃棄すること。
次回は、変性アクリル系接着剤(SGA)について述べます。
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